群馬県の温泉郷にある創業30年の温泉旅館。客室数31室。4年前に後を継いだ2代目社長と若女将が、「自分たちが泊まりたい」と思える旅館を目指し、その夢を一緒に叶える社員を育てていきたい、とご相談に来られた。社員たちは真面目で仕事熱心だが、リラックスを求めて温泉に来たお客さまを「おもてなし」するというサービス精神がうすく、決められた仕事を淡々とこなす姿に理想と現実のギャップがあった。
お話しを伺って、一番に必要なことは社員に「おもてなし」をする楽しさ、お客様に喜んでいただくうれしさを感じてもらうことではないかと感じた。そこでフロントや客室係りといった接客の担当だけでなく、風呂場の担当者や洗い場、また駐車場の警備といった一見接客サービスとは関係のなさそうな社員たち(しかもそのほとんどが決まってベテランだった)も全員参加でロールプレイを中心とした参加型の研修を行うことを提案した。ベテラン社員にマナー・接客研修というのは今更…との抵抗があったが、もともとサービスの意識の低い人たちを引き上げることが全社的サービス精神向上の第一歩だとご説明し、お二人に承諾をいただいた。
超一流のシティホテルとは違い、そこで働く人たちの個性と温かみ溢れるサービスの徹底を目指し、一人ひとりの個性を伸ばしながら、お客さま満足を高めるような指導を実践する講師を選定。ベテラン社員が多数参加ということを踏まえ、豊富な指導経験とお仕着せのマナー・接客研修だけではなく、コミュニケーション能力開発でも実力のある浦野啓子先生と松尾友子先生にお願いをした。
旅館の繁忙期を避け、約2ヶ月に1回。計6回の研修を実施。前日のお客さまを送り出した後、旅館を一日休業とし、全員参加で行った。講師は前日から、お客さまとして宿泊し、その都度感じたことをお客さま目線で診断し、研修に活かしていくようにした。






研修第1回目は、予想通り「営業を休んでまで、接客マナー研修など…」といったモチベーションの低いベテラン社員が目立った。しかし、実際に玄関先に場所を移しての「お客さまお迎えロールプレイング」など現場が見える実習と、日ごろの不安を講師に確認しながら熱心に取り組む若手の姿を見るうちに、彼らの中にも社長が目指す「おもてなし」の精神が見えてきたようだった。また要所でベテランをたてる講師の気遣いも心をひらく手助けとなったようだ。
研修半ばからは「社内の共通ルールができた」「きちんと勉強をしているという事実が自信につながった」「お客さまとのコミュニケーションが楽しくなった」「年代、職種を超えての社員間の絆が深まった」「互いの長所・短所が分かるようになったのでフォローし合えるようになった」「小さなクレームが減った」
等々社長様からも成果を感じられる言葉をいただけるようになり、研修終了後は半年毎のフォローアップ研修のお手伝いのご依頼をいただいた。
社長様の好意により私自身も研修前日に宿泊させていただいたが、研修内容を一生懸命実務に反映させている姿が印象に残っている。